株式会社大谷(新潟)訪問 大谷勝彦社長
会社概要
会社名  株式会社大谷
資本金  1億円
所在地  新潟県新潟市江南区亀田工業団地1-3-5
売上高  24億2571万円(平成23年実績)
従業員  600名(2011年現在)
創業年  1951年(昭和26年)
設立年  1966年 (昭和41年)
事業等  印章、印刷等の製造販売、その他店舗運営

株式会社大谷

はんこ(印章)の世界-
現在、印章市場は衰退の一途を辿っている。折からのIT化で、ペーパーレスになっていることも原因であるが、その中で、ニッチ市場の雄として、株式会社大谷は、ここ新潟の亀田工業団地内でも異色の光を放っている。多角化にも積極的で、現在、貴金属買い取り事業にも進出。店舗運営と600名の従業員がそのパワーの源である。

株式会社大谷

雇用のユニークさでも抜きに出ている。昭和51年の法制化の前に、株式会社大谷は、障碍者雇用を始めていた。話によると、昭和41年の開始であるので、ずいぶんと早い。「昔から、障碍者の受入には、なじみがあった業界」と大谷社長は伝えてきた。法制化した後は、大手企業や市役所・県庁が、障碍者の獲得に動き、障害を持つ人の採用は増えていった。それでいい、と静かに大谷氏は語っていた。

 

 

そのパワーの源は優しさ
御年70歳の大谷社長は、今年で経営から退く。その退職金を寄付して、社会福祉法人を立ち上げるという。法人として、元々、閉鎖したゴルフ場を買い取っており、そこに農場や牧場を開設して、精神障害やうつ病の方の回復施設を目指すとも語った。職場では、65歳が定年の規定だが、店舗の先では70歳まで働く方も多いという。元気な老後の秘訣は、適度に働ける職場であり、そして豊な人生の定年後の楽しみに、働く場を与えているのも株式会社大谷の理念からだ。

理念の制定
株式会社大谷の経営理念は、平成元年に制定し、その内容は、社員を遇する言葉で締めくくられている。
[株式会社大谷の経営理念]
1.お客様に喜びと感動と満足を与え続ける。
2.働きがいのある職場作りと社員の幸福をめざす。
3.社会福祉に貢献する集団を作る。
早くから「社員の幸福をめざす」という言葉が目立つ。
創業時、7坪の事務所が借りられず、僅か3.5坪から始まったハンコの会社は、岩手県盛岡で修行してから、“新潟一のハンコ屋”になる夢を着実に叶えていった。現在は、自己資本比率も50%に迫る優良事業法人だ。ただ、その前を遮ろうとした存在が、大谷社長の病気である。その病気との戦いは続けられている。生死をさまよい、そして今日70歳まで生きられたことに感謝していると続けている。ただ、悪いことだけではないようだ。それら病気をきっかけに、考え方が変わったという。その大谷社長の障碍者雇用は、ごくごく当たり前の流れであった。長く生きられないと感じた時から、誰かの幸せ、娘を残しての想いや母親より早く先立つことに対して、申し訳なさも相まって、その後の株式会社大谷は、働く人の幸せを考えていった。

 

この会社では障碍者を感じさせない
難病もあり、全国展開は利益拡大のための所業ではなかったという。
どちらかというと、それまでに続けてきていた「ご家庭訪問」で、障碍者を持つ家庭の不安さを知った。いまのままでは、両親の不安は取り除けない。全国展開し、それら職場を増やすことに奔走する。行政は暗黙のうちに、一生涯面倒見るというルールを、障碍者の自立を促す方向性に舵を切った。いわゆる自立支援という名の「納税者側へのシフト」である。職場を見学させていただくと、全員から丁寧な挨拶をされ、気持ちがよい。同業種を知っているだけに、この「心地よさ」はなぜか、と疑問が残った。すると、説明の際での言葉を思い出した。「前にこの会社に訪問された方が“この会社では障碍者を感じさせない”という言葉を頂いた」その理由が、この「心地よさ」であろう。普通の職場を実現しているのである。

 

この会社をそのまま活かしてほしい
ここでハンコを作ると、保証書がついてくる。クレームはもちろん電話で受け付けるし、その場でお店に持ち込むと、無料で直してくれるとのこと。驚いたのは、休日の連絡先は、(社長宅)に繋がるようになった仕掛けである。「社員が一生懸命にやった後のクレームは、社長の責任である」
そういって大谷社長は、優しく微笑んだ。この言葉と共に優しい笑顔の中の自信を見た。

経営理念は制定と共に、毎朝、唱和しているという。その食堂を兼ねたスペースは、会社内で一番リラックスできる空間を心がけたという。更に、表彰制度も整え、利益一覧表も試算表も公開している「オープンな経営」であり、透明性が高い。それが、業界内において、驚異の利益率に繋がり、2012年は前年の震災の影響も克服して、増益増収である。仕掛けも仕組みも、すべて社員にわかりやすいものとし、コックピット型の経営指標を各自に回覧する徹底ぶり。知らない・わからない場合は経理がわかるような資料を作って説明に回ると聞いた。“知らせる”ことに徹底している点が経営品質の高さに繋がっている。

 

「社長が知っていることは全てが知っている」
ここまで、経営のことを知らせるとリスクがあるのでは、という疑問には、「経理を任せるだけの同族内に才はなく、すべてを(他人に)任せるから、身内に細工をするようなことは出来ないものだよ」その状態が良いのだと続ける。やりたいことをやれる「職場」に採用から人事まで、自主性を重んじる仕掛けは、その後の見学でも続く。「経営(者)が、あまり細かいことをいうことがないよう気を付けている」と小さな積み重ねを繰り返し、そして“みんなが一緒にやった結果”が経営数値であり、それらは、みんなのお蔭であるというと、扉も仕切りもない社長室を案内してくれた中で、自然と理解できた。

 

社員のいいところを褒めること以外に、人材を育つことはないと言い切る大谷社長。
努力と優しさを持つ大谷氏に率いられた株式会社大谷の「いい会社」度合いは、ずば抜けて、もはや「芸術の域」であると、参加者一同、驚愕の事実に、満足と心の豊かさ、温かさをもって、敷地を後にした。このような「いい会社」が日本全国で増えることが希望と強く思った。私たち「いい会社」の法則実行委員会も、「実行」することの重要性を再認識して、今後の展開を図りたい。

 

株式会社大谷様訪問レポート(50代女性経営者) 

株式会社大谷様訪問レポート(20代学生)

株式会社大谷

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<関連資料> *このレポートでは障害者を「障碍者」の言葉に置き換えています。 株式会社大谷 http://www.p-otani.co.jp/
株式会社サンバーストにいがた http://www.sunburst-n.co.jp/
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